失語症のリハビリ教材には、本をコピーして使用するものだけでなく、パソコンを使って課題を印刷するタイプの教材もあります。
今回紹介する『失語症ドリル 改訂版』は、付属のCD-ROMに1,129枚の課題が収録されている教材です。
1,000枚を超える課題が収録されているため、かなりボリュームのある教材ですが、実際に内容を確認してみると、単純に「この一冊で失語症の訓練を幅広く網羅できる」というタイプの教材とは少し違う印象を受けました。
今回は、収録されている課題の内容や、実際に確認して感じた特徴について紹介します。
CD-ROMに1,129枚の課題を収録
『失語症ドリル 改訂版』の大きな特徴は、付属のCD-ROMに1,129枚の課題が収録されていることです。
課題はCD-ROMに収録されたデータを使用するため、利用するにはパソコン環境が必要になります。
そのため、購入前には自宅や施設のパソコンでCD-ROMを読み込めるか確認しておいたほうがよいでしょう。
最近のパソコンにはCD・DVDドライブが搭載されていないものもあるため、その場合には別途外付けドライブなどが必要になる可能性があります。
本を開いてそのままコピーできる教材と比較すると、パソコンを起動して必要な課題を探し、印刷するという作業が必要になるため、人によっては少し手間に感じるかもしれません。
一方で、必要な課題を何度も印刷して使用したい場合には、データで収録されていることが便利に感じられる場合もあると思います。
絵と文字を使った基礎的な課題
収録されている課題のひとつに、絵と文字を線で結び、その文字を模写する課題があります。
絵と文字を対応させるだけでなく、その後に実際に文字を書くところまで取り組める構成です。
また、名詞句と動詞句を線で結ぶ課題も収録されています。
単語だけを扱う課題だけではなく、複数の語を組み合わせた表現を扱う課題も含まれています。
動詞を選んで文章を完成させる課題
文章の文頭が提示され、それに続く適切な動詞を選択して文章を完成させる課題があります。
絵を見て単語を答えるだけではなく、文章の流れを考えながら適切な動詞を選ぶ必要があります。
単語レベルから文章レベルの練習へ進みたい場合に使える課題のひとつです。
文章完成課題
文章を完成させる課題も複数収録されています。
仮名を使って文章を完成させる課題のほか、提示された文頭から続きを自分で考えて文章を完成させる課題もあります。
選択肢から答えを選ぶ課題と比較すると、自由に続きを考える課題では、自分で言葉を想起して文章を組み立てる必要があります。
そのため、同じ文章完成でも課題によって求められる能力や難易度が異なります。
助詞の穴埋め課題
選択肢の中から適切な助詞を選び、文章の空欄を埋める課題もあります。
失語症では、名詞や動詞だけでなく、助詞を適切に使用することが難しくなる場合があります。
文章の中でどの助詞が適切なのかを考える練習として使用できる課題です。
漢字の仮名振り
漢字を読んで仮名を書く課題も収録されています。
漢字を見て読みを想起し、それを仮名で書く練習ができます。
呼称や文章完成とは異なる形式の課題なので、普段の訓練に違った種類の課題を取り入れたい場合にも使えそうです。
仮名だけで書かれた長文を区切る課題
個人的に特徴的だと感じたもののひとつが、仮名だけで書かれた文章を適切な位置で区切る「長文分節課題」です。
通常の文章では漢字や句読点なども文章を読む手がかりになりますが、仮名のみで連続して書かれていると、どこで言葉が区切られているのかを考える必要があります。
単語を読む課題とは異なり、ある程度まとまった文章を扱う課題になっています。
4コマ漫画を使った説明課題
4コマ漫画「クリちゃん」を使った説明課題も収録されています。
漫画の内容を理解し、そこで何が起きているのかを説明する課題です。
絵の名前を答えるような単語レベルの課題とは違い、複数の場面のつながりを理解して、それを言葉で説明する必要があります。
自由に話す練習や、出来事を順序立てて説明する練習として使用できそうです。
1,129枚あるが、網羅性はそれほど感じなかった
『失語症ドリル 改訂版』には1,129枚もの課題が収録されています。
数字だけを見ると、「これ一冊でさまざまな失語症訓練ができるのでは?」と思うかもしれません。
しかし、実際に内容を確認した印象としては、課題枚数は非常に多いものの、失語症のさまざまな症状や難易度を体系的に網羅しているという印象はそれほど強くありませんでした。
もちろん、収録されている課題そのものにはさまざまな形式があります。
ただ、「1,129枚収録されている」という課題数と、「幅広い訓練内容を網羅している」ということは、分けて考えたほうがよいと思います。
購入する際には課題数だけではなく、自分が取り組みたい課題が収録されているかを確認して選ぶことが大切です。
『失語症訓練のためのドリル集』を持っている方の追加教材にも
実際に内容を確認して、個人的には『失語症訓練のためのドリル集』など、すでに別の失語症教材を使用している方が、訓練課題のバリエーションを増やすために追加する一冊として使いやすいのではないかと感じました。
毎回同じ形式の課題を繰り返していると、取り組む側も飽きてしまうことがあります。
そんなときに、長文分節や4コマ漫画の説明など、普段とは違った形式の課題を取り入れるために利用する方法もありそうです。
『失語症ドリル 改訂版』はこんな方に向いていそう
実際に内容を確認して、向いていると感じたのは、
・たくさんの課題プリントを用意したい方
・パソコンを使って教材を印刷できる環境がある方
・現在使用している失語症教材に課題のバリエーションを追加したい方
・単語だけでなく、文章完成や助詞、長文、漫画説明などにも取り組みたい方
です。
一方で、パソコンやCD-ROMを使用せず、本からすぐにコピーして使いたい方には少し扱いにくいかもしれません。
また、「この一冊だけで失語症の訓練を幅広くカバーしたい」という目的の場合には、購入前に収録内容を確認したほうがよいと思います。
実際に見て感じたこと
『失語症ドリル 改訂版』の一番大きな特徴は、やはりCD-ROMに1,129枚もの課題が収録されていることです。
絵と文字の線結びや模写から、動詞選択、文章完成、助詞、漢字の仮名振り、長文分節、4コマ漫画の説明まで、さまざまな形式の課題が用意されています。
一方で、実際に内容を確認してみると、1,129枚という数字から想像するほど「失語症訓練全体を網羅した教材」という印象ではありませんでした。
そのため、これ一冊ですべてをまかなうというより、すでに持っている教材にプラスして、課題の種類やバリエーションを増やすために使うという位置づけが合っているように感じました。
また、CD-ROMを使用する教材なので、購入前にはパソコン環境の確認が必要です。
課題数の多さだけで選ぶのではなく、収録されている課題内容と自分が練習したい内容が合っているかを確認して選びたい一冊です。


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