失語症では、物の名前は分かっていても、その名前を言葉として思い出すことが難しくなる場合が多くあります。
今回紹介する『失語症リハビリテーション実践ガイド 教材編2 名詞表出訓練課題①』は、名詞の表出を中心に練習する教材です。
実際に内容を確認してみると、絵に対応する言葉を選ぶ課題から、文字を並べ替えて名詞を完成させる課題まで収録されていました。
特に文字の並べ替え課題が充実しており、漢字のヒントの有無やダミー文字などによって、課題の難しさを変えながら取り組める構成になっています。
『教材編2 名詞表出訓練課題①』の内容
この教材には、絵を見ながら適切な言葉を選んだり、提示された文字を並べ替えて名詞を完成させたりする課題が収録されています。
主な課題は、
・絵に対応する言葉を6択から選ぶ課題
・絵と漢字のヒントを見て文字を並べ替える課題
・文字のヒントなしで行う並べ替え課題
・ダミー文字を含む文字の並べ替え課題
です。
同じ名詞を扱う教材でも、教材編1が名詞の「理解」を中心としていたのに対し、教材編2では文字を利用しながら名詞の「表出」につなげていく内容になっています。
絵に対応する言葉を6択から選ぶ課題
絵を見て、その絵に対応する言葉を6つの選択肢から選ぶ課題があります。
絵を見ただけで名前を思い出す自由回答形式とは異なり、選択肢の中から正しい言葉を探すことができます。
「何の絵かは分かるけれど、自分で名前を思い出すのは難しい」という場合にも取り組みやすい形式です。
いきなり文字を書いたり、自由に呼称したりする課題に進むのが難しい方にとって、名詞表出へつなげるための一段階として利用できそうです。
絵と漢字のヒントを使った文字の並べ替え
絵と漢字が提示され、さらにバラバラに並んだ文字を正しい順番に並べ替えて名詞を完成させる課題があります。
使用されている言葉は仮名で2〜8音程度です。
短い言葉から比較的長い言葉まで扱われているため、語の長さを変えながら練習できます。
絵だけでなく漢字もヒントとして提示されているので、絵を見ただけでは言葉を思い出しにくい場合でも、文字を手がかりにして取り組むことができます。
文字のヒントがない並べ替え課題
漢字などの文字ヒントを使わず、絵を見ながら文字を並べ替える課題もあります。
漢字のヒントがある課題では、提示された漢字そのものが言葉を思い出す手がかりになります。
一方、文字ヒントがなくなると、絵から対応する名詞を考えたうえで、提示された文字を正しい順番に並べる必要があります。
同じ「文字の並べ替え」でも、ヒントの有無によって難しさを変えられるところが特徴です。
ダミー文字が入った並べ替え課題
必要な文字だけでなく、単語には使用しないダミー文字が混ざった並べ替え課題も収録されています。
こちらでは仮名で2〜6音の言葉が使われています。
通常の並べ替え課題では、提示された文字をすべて使えば単語を作ることができます。
しかし、ダミー文字が入ることで、「どの文字が必要なのか」を判断する作業が加わります。
必要な文字を選択したうえで正しい順番に並べる必要があるため、通常の並べ替えとはまた違った難しさがあります。
ヒントを変えながら段階的に取り組める
実際に内容を確認して、この教材の特徴だと感じたのが、同じ名詞表出でもヒントの与え方を変えながら取り組めることです。
例えば、文字の並べ替えでも、
絵+漢字のヒントあり
↓
ダミー文字あり
↓
文字ヒントなし
と、課題の条件を変えることができます。
最初から何も手がかりがない状態で名詞を思い出すことが難しくても、絵や漢字、提示された文字などを利用することで答えられる場合があります。
どの程度のヒントがあれば答えられるのかを確認しながら、課題を選べる構成になっています。
2〜8モーラまで幅広い長さの言葉を練習できる
漢字のヒントがある並べ替え課題では、2〜8音までの言葉が使用されています。
短い言葉なら並べ替える文字数も少なくなりますが、語が長くなるにつれて扱う文字も増えていきます。
そのため、短い言葉から始めて、徐々に長い言葉へ進むといった使い方もできそうです。
一方、ダミー文字を含む課題は2〜6モーラとなっています。
単純に語の長さだけでなく、ヒントの有無やダミー文字の有無によっても難易度が変わるため、取り組む方の状態に合わせて選ぶとよいと思います。
『教材編2 名詞表出訓練課題①』はこんな方に向いていそう
実際に内容を確認して、特に向いていると感じたのは、
・『りんご→しんご』『いちご→うちご』など子音や母音でのいい誤りがある方
・『とうもろこし→とうもころし』のように文字の並び替えでつまづきやすい方
・漢字は書けるが、仮名になると難しくなる方
・言葉は出ないが、文字の並び替えなら取り組めそうな方
です。
名詞の意味そのものを理解することが難しい場合には、まず教材編1のような名詞理解課題から取り組んでみましょう。
実際に見て感じたこと
『失語症リハビリテーション実践ガイド 教材編2 名詞表出訓練課題①』を実際に確認して感じたのは、文字の並べ替えを使った名詞表出課題が充実している教材だということです。
単純な並べ替えだけでなく、漢字のヒントがあるもの、文字ヒントがないもの、さらにダミー文字が含まれているものなど、複数の形式が用意されています。
また、仮名2〜8音まで幅広い長さの言葉が扱われているため、短い言葉から始めて徐々に長い言葉へ進むこともできます。
何もヒントがない状態で名詞を答えることが難しくても、絵や漢字、仮名文字そのものが手がかりになると答えられる場合があります。
そうした方が、漢字や仮名の手がかりを利用しながら正しい音の順番での名詞の表出につなげていく練習をしたい場合に使いやすい一冊だと感じました。
文字の並べ替えを中心に練習したい場合には教材編2、さらに別の方法でも名詞表出を練習したい場合には教材編3、4、5を利用するという使い分けもできそうです。


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