失語症では、「言葉は分かっているのに文字が出てこない」「漢字は分かるけれど、ひらがなが思い出せない」といった書字の難しさがみられることがあります。
『失語症訓練のためのドリル集4 漢字・仮名の改善をめざす』は、漢字・ひらがな・カタカナを使ったさまざまな課題を通して、文字の想起や書字を練習する教材です。
実際に内容を確認すると、漢字だけでなく仮名を扱う課題も多く、漢字よりも仮名に関する課題がやや多い構成となっていました。
主に重度〜中等度の失語症の方を対象とした一冊です。
『失語症訓練のためのドリル集4』はどんな教材?
4巻のテーマは「漢字・仮名」です。
絵に合う漢字を選ぶ比較的取り組みやすい課題から、絵の名前をひらがなやカタカナで書く課題まで収録されています。
また、単純に文字を書くだけでなく、
・漢字と仮名を対応させる
・文字を正しい順番に並べる
・漢字から読みを想起する
・ひらがなとカタカナを対応させる
など、文字と音の対応を扱った課題もあります。
そのため、書字だけに限定せず、漢字・仮名と音韻との関係をさまざまな方法で練習できます。
収録されている主な課題
実際に確認すると、次のような課題が収録されていました。
・絵に合う漢字を選ぶ
・絵に合う漢字を書く
・文章中の仮名単語に対応する漢字を選ぶ
・文章中の仮名単語を漢字で書く
・漢字単語の中から同じ語頭音をもつ語を探す
・漢字と仮名を対応させる
・漢字単語に対応するように、ひらがなを正しい順番に並べる
・絵の名前をひらがなで書く
・ひらがなとカタカナを対応させる
・カタカナ語に対応する絵を選ぶ
・外来語を完成させる
・ひらがなをカタカナに変換する
・絵の名前をカタカナで書く
・漢字に読み仮名をつける
漢字、ひらがな、カタカナを幅広く扱っています。
タイトルからは漢字の課題が多い印象を受けるかもしれませんが、実際には仮名を扱う課題のほうがやや多いと感じました。
難易度は重度〜中等度向け
主な対象は重度〜中等度の失語症の方です。
絵を見て正しい漢字を選ぶなど、選択肢を利用できる課題から始めることができます。
一方で、絵を見て名前をひらがなやカタカナで書いたり、文章中の単語を漢字に変換したりする課題では、自分で文字を想起する必要があります。
そのため、症状に合わせて選択課題から始め、徐々に自発的な書字課題へ進めることができます。
漢字・ひらがな・カタカナを幅広く練習できる
この本の特徴は、漢字だけでなくひらがな・カタカナまで幅広く扱っていることです。
「漢字を書く練習帳」というよりも、文字と音の対応を含めて日本語の表記を幅広く練習する教材と考えたほうが内容に近いと思います。
特に、
「言いたい言葉は分かっているのに文字が出てこない」
「漢字は分かるけれど、読み方や仮名が思い出しにくい」
「ひらがな・カタカナの想起や文字の並びが難しい」
といった場合に、状態に応じた課題を選びやすくなっています。
2巻との違いは?
2巻と4巻には、語頭音や音韻を扱う課題があるため、「どちらを選べばいいの?」と迷うかもしれません。
2巻は『意味・音韻面から語想起(名詞)の改善をめざす』というタイトルの通り、意味や音韻を利用して**「ことば」を想起すること**が中心です。(詳しいレビューはこちら)
たとえば、語頭音をヒントに絵の名前を思い出したり、同じ語頭音をもつ言葉を考えたりします。
一方、4巻では、漢字や仮名を想起したり、音と文字を対応させたりします。
つまり、大まかに分けると、
2巻:意味や音を手がかりに「ことば」を思い出す
4巻:「文字」を思い出したり、音と文字を対応させたりする
という違いがあります。
2巻では音韻情報が語想起の手がかりとして使われる課題がありますが、4巻では、漢字を見てその読みを考えるなど、音韻情報そのものを自分で想起する必要がある課題もあります。
そのため、「言いたい単語そのものがなかなか出てこない」場合には2巻、「単語は分かるけれど漢字や仮名で書くことが難しい」「文字と音の対応が難しい」といった場合には4巻が選択肢になります。
課題の使い方まで説明されている
このシリーズでは、それぞれの課題について、
・どのような方に適しているか
・課題の進め方
・ヒントの出し方
・実施上の留意点
・応用した訓練方法
などが説明されています。
また、文字が大きく、書き込むスペースにも余裕があります。
書字訓練では実際に文字を書くスペースが必要になるため、書き込みやすいレイアウトになっていることも使いやすいポイントだと思います。
なお、このシリーズには解答が付いていません。
無料プリントでも練習できる?
漢字と仮名の対応、絵を見て名前を書く、ひらがな・カタカナの練習など、一部の課題は無料プリントでも補うことができます。
当サイトにも文字の並び替えや漢字のかなふりなど用意があるものもあります。
一方で4巻では、漢字・ひらがな・カタカナを扱うだけでなく、文字の並び替えや音韻との対応など、さまざまな課題がまとめられています。
そのため、単純な書字練習だけではなく、漢字・仮名と音との関係を含めて体系的に練習したい場合には、市販教材を利用するメリットがあります。
無料プリントで必要な課題だけを練習する方法と、一冊の教材で段階的に取り組む方法を、目的に合わせて選ぶとよいと思います。
こんな方におすすめ
『失語症訓練のためのドリル集4』は、
・言葉は分かるのに文字が思い出しにくい
・よく使う漢字の選択や書字を練習したい
・ひらがなの想起や書字を練習したい
・カタカナや外来語を書くことが難しい
・文字の順番を並べることが難しい
・漢字と仮名、音と文字の対応を練習したい
・書字を中心とした教材を探している
といった方におすすめです。
まとめ
『失語症訓練のためのドリル集4』は、漢字・ひらがな・カタカナを幅広く扱った書字訓練教材です。
タイトルは「漢字・仮名」ですが、実際に確認すると漢字だけに偏った内容ではなく、仮名に関する課題がやや多く収録されています。
絵に合う漢字を選ぶ課題から、ひらがな・カタカナによる書称、文字の並び替え、漢字と仮名の対応など、さまざまな方法で練習できます。
2巻と似た音韻課題もありますが、2巻が意味・音韻を利用した「ことばの想起」を中心とするのに対し、4巻は「文字の想起」や「音と文字の対応」が中心です。
話す言葉そのものよりも、漢字・ひらがな・カタカナなどの書字に難しさがある方に検討しやすい一冊だと思います。
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