「言いたい言葉がなかなか出てこない」という失語症の症状に対しては、さまざまな方法で語想起を促すことができます。
『失語症訓練のためのドリル集2 意味・音韻面から語想起(名詞)の改善をめざす』では、カテゴリーなどの「意味」と、語頭音やモーラ数(音の数)などの「音韻」の両面から名詞の語想起を練習します。
実際に内容を確認したところ、一般的な呼称課題だけでなく、言葉の意味や音の特徴を利用した課題が豊富に収録されているのが特徴的な一冊でした。
主に重度〜中等度の失語症の方に使いやすい内容です。
『失語症訓練のためのドリル集2』はどんな教材?
1巻が絵を見て名前を選択したり、書いたりする比較的オーソドックスな名詞課題を中心としているのに対して、2巻では意味処理と音韻処理に着目した課題が中心となっています。
単に「絵を見て名前を答える」のではなく、同じカテゴリーに属する言葉を探したり、語の音の数を考えたり、語頭音を手がかりに言葉を想起したりします。
そのため、「名詞が出にくい」という症状に対して、意味・音韻という異なる側面からアプローチできる教材です。
収録されている主な課題
実際に確認すると、次のような課題が収録されていました。
・同じカテゴリーに属する語や絵を見つける
・仲間外れの語や絵を見つける
・意味的に関連する語を想起する
・語をカテゴリーごとに分類する
・語のモーラ数を考える
・語頭音の文字をヒントに、絵の名前を想起する
・同じ語頭音をもつ語を想起する
・指定された音が単語のどの位置にあるかを判断する
・同じ語頭音をもつ語を鑑別して想起する
・語頭音だけが異なる音韻類似語を扱う
・同音異義語を扱う
モーラ数(音の数)を考える課題には4〜6個程度の選択肢が用意されており、すべてを自力で想起する課題だけではありません。
難易度は重度〜中等度向け
主な対象は重度〜中等度の失語症の方です。
選択肢を利用できる課題もあり、比較的重い失語症の方でも状態に合わせて取り組めるようになっています。
一方で、同じ語頭音をもつ言葉を自分で想起するなど、より高い音韻処理や語想起能力を必要とする課題もあります。
同じ一冊の中でも難易度に幅があるため、症状に応じて課題を選択して使用できます。
意味と音韻の両方からアプローチできる
この本の大きな特徴は、「言葉の意味」と「言葉の音」の両方を扱っていることです。
たとえばカテゴリー分類では、単語同士の意味的な関係を考える必要があります。
一方、モーラ数や語頭音、音の位置を扱う課題では、単語を構成している音に注意を向けます。
そのため、意味理解につまずきがみられる方だけでなく、言葉自体はある程度分かっていても、音の配列や音韻処理につまずき、それが語の出にくさにつながっている方にも使いやすい内容だと思います。
認知症を合併し、意味理解の低下がみられる方への課題を検討する際にも選択肢の一つになります。
課題の使い方まで説明されている
このシリーズでは、問題だけでなく、
・どのような方に適した課題なのか
・課題の進め方
・ヒントの出し方
・実施するときの留意点
・応用した訓練方法
などについて説明されています。
また、文字が大きく、書き込むスペースにも余裕があります。
無料プリントでは「問題は手に入ったけれど、どのような人に使えばよいのかわからない」ということもあります。
その点、訓練の進め方まで確認できることは専門的なドリルを利用するメリットだと思います。
なお、このシリーズには解答が付いていません。
1巻との違いは?
1巻と2巻はいずれも「名詞の語想起」を扱っているため、どちらを選べばよいか迷うかもしれません。
1巻では、絵を見て正しい名前を選ぶ、模写する、書称する、説明文から名詞を想起するといった、比較的基本的な名詞課題が中心です。(詳しいレビューはこちら)
一方、2巻ではカテゴリーなどの意味的な処理と、モーラ・語頭音などの音韻的な処理に重点が置かれています。
そのため、
名詞の選択・呼称・書称などを幅広く練習したい場合は1巻
意味や音韻に着目しての言葉の想起を練習したい場合は2巻
と考えると選びやすいと思います。
4巻との違いは?
2巻と『失語症訓練のためのドリル集4 漢字・仮名の改善をめざす』には、どちらも文字を扱う課題があるため、似ているように感じるかもしれません。
大きな違いは、何を想起することを目的としているかです。
2巻では、語頭音やモーラなどの音韻情報を手がかりとして、名詞そのものを想起することを目指します。
たとえば、絵を見て語頭音の文字をヒントに名前を思い出したり、同じ語頭音をもつ言葉を想起したりします。
一方、4巻は「漢字・仮名の改善」がテーマです。言葉の意味や名前が分かっている状態から、それに対応する漢字や仮名を想起したり、音韻と文字を対応させたりする課題が中心になります。(詳しいレビューはこちら)
簡単に分けると、
2巻:音や意味を手がかりに「ことば」を思い出す
4巻:ことばから「文字」を思い出したり、音と文字を対応させたりする
という違いがあります。
そのため、「言いたい言葉そのものが出てこない」ことへのアプローチなら2巻、「名前は分かるけれど、それを漢字や仮名で書くことが難しい」といった書字面へのアプローチなら4巻が選択肢になります。
無料プリントでも練習できる?
カテゴリー分類や仲間外れなど、一部の課題は無料プリントでも練習できます。
ただし、1巻と比較すると、2巻には無料教材ではあまり見かけない課題も多い印象でした。
特に単語内での音の位置、音韻類似語など、音韻面をさまざまな角度から扱った課題をまとめて用意するのは大変です。
無料プリントを組み合わせて練習することもできますが、意味・音韻面の課題をある程度まとまった形で利用したい場合には、この本を購入するメリットは1巻より感じやすいと思います。
こんな方におすすめ
『失語症訓練のためのドリル集2』は、
・言いたい単語がなかなか出てこない
・意味的なつながりを利用して語想起を練習したい
・語頭音などをヒントにすると言葉が出やすい
・言葉の音の並びや音韻処理につまずきがある
・意味理解にも難しさがみられる
・無料プリントでは見つけにくい音韻課題を探している
といった方におすすめです。
まとめ
『失語症訓練のためのドリル集2』は、カテゴリーなどの意味的な側面と、モーラ数や語頭音などの音韻的な側面から名詞の語想起を練習できる教材です。
1巻にも名詞の語想起課題はありますが、2巻では「意味」と「音」により焦点を当てています。
また、漢字・仮名を中心に扱う4巻とは、音韻を手がかりに「ことば」を想起するのか、「文字」の想起や音と文字の対応を練習するのかという違いがあります。
無料プリントで補える課題もありますが、特に音韻面については無料教材ではあまり見かけない課題も収録されています。
一般的な名詞課題だけではなく、意味・音韻の両面から語想起にアプローチしたい方には、購入を検討しやすい一冊だと思います。
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