失語症のリハビリ教材というと、絵を見て名前を答えたり、文字を書いたりする「問題集」のような教材を思い浮かべる方も多いと思います。
今回紹介する『失語症からの言葉ノート』は、そうした練習を中心とした教材とは少し違います。
実際に内容を確認してみると、日常的な場面を題材にしながら、そこからコミュニケーションにつなげていく内容になっていました。
特に、退院後など自宅で生活している失語症の方の「話すきっかけ」を作りたいときに使いやすそうな一冊です。
『失語症からの言葉ノート』の内容
この本では、日常生活でありそうな場面が提示され、その内容に関連した課題や話題が続く構成になっています。
決まった答えのある課題だけでなく、自分のことについて自由に話したり、書いたりするページもあります。
そのため、正解を目指して問題を繰り返し解くというよりも、教材をきっかけにして自分の経験や考えを表現する練習につなげやすい内容だと感じました。
答えのある課題と自由に表現する課題がある
この教材の特徴のひとつが、答えのある課題だけで構成されていないことです。
自由に話したり書いたりする課題では、自分で内容を考えて表現する必要があります。
単語や文章の練習だけで終わらず、そこから実際のコミュニケーションへ話題を広げやすいところが、この本の特徴だと思います。
在宅生活での「話すきっかけ」に使いやすそう
入院中は、リハビリスタッフや医療スタッフ、同じ病室の方など、さまざまな人と関わる機会があります。
一方、退院して自宅で過ごすようになると、生活環境によっては人と話す機会が少なくなることがあります。
家族と一緒に暮らしていても、毎日顔を合わせていると話題がいつも同じになってしまうこともあります。
そんなとき、この教材に掲載されている日常的な話題をきっかけに、
「あなたの場合はどう?」
「以前はどうしていた?」
「どんなものが好き?」
など、そこから会話を広げていく使い方ができそうです。
単に問題を解くための教材というより、自宅でコミュニケーションを取るためのきっかけとして使える教材という印象を受けました。
重度の失語症では支援が必要な課題も
一方で、自由に話したり書いたりする課題は、重度の失語症の方が一人で取り組むには難しい場合があります。
自由回答では、選択肢から答えを選ぶ課題とは違い、自分で言葉を思い出して表現する必要があります。
そのため、言葉を思い出すことや文章を作ることが難しい場合には、家族や支援者と一緒に取り組むほうが使いやすいと思います。
例えば、質問を短くしたり、選択肢を提示したり、言葉の一部をヒントとして伝えたりすることで、答えやすくなる場合があります。
「一人でできないから使えない」と考えるのではなく、支援する人との会話そのものを練習の一部として利用するのもよさそうです。
軽度の失語症では簡単に感じる課題もある
反対に、軽度の失語症の方にとっては、簡単に感じる課題も含まれています。
ある程度スムーズに日常会話ができ、より複雑な文章理解や文章作成などを練習したい場合には、この一冊だけでは物足りなく感じる可能性があります。
失語症といっても症状や得意・不得意には大きな個人差があります。
そのため、「失語症だからこの本が適している」というよりも、現在どの程度の課題に取り組めるのかを確認したうえで選ぶことが大切です。
57ページと比較的薄め
ページ数は57ページで、失語症の訓練教材としては比較的薄めです。
大量のプリントを使って繰り返し練習したい方の場合、ボリュームを少なく感じるかもしれません。
一方で、分厚い教材を最初から最後まで進めるタイプではないため、自宅で少しずつ取り組みたい場合には使いやすいと思います。
課題を終わらせることだけを目的にせず、ひとつの話題から会話を広げながら使うことで、この教材の良さを生かしやすくなりそうです。
『失語症からの言葉ノート』はこんな方に向いていそう
実際に内容を確認して、特に向いていると感じたのは、
・退院後、自宅で過ごしている失語症の方
・自宅で話す機会が少なくなっている方
・家族との会話のきっかけが欲しい方
・問題を解くだけでなく、自分のことを話したり書いたりする練習をしたい方
・家族や支援者と一緒に教材を使いたい方
です。
反対に、大量の課題を繰り返し行いたい方や、軽度でより難しい言語課題に取り組みたい方には、別の教材も併用したほうがよいと思います。
実際に見て感じたこと
この本を実際に確認して、一番特徴的だと感じたのは、「正解するための練習」だけではなく、「話すきっかけを作る」ことにも使える点です。
自宅での失語症リハビリというと、どうしてもプリントを解くことに意識が向きやすいですが、実際の生活では人とコミュニケーションを取ることも大切です。
特に退院後は、入院中より人と話す機会が減ることがあります。
そんなときに教材を間に置いて、
「これについてどう思う?」
「自分だったらどうする?」
と話題を広げる。
そうした使い方に、この本の良さがあると思いました。
57ページとボリュームは多くありませんが、問題数だけで評価するタイプの教材ではなく、ひとつの課題からどれだけ会話を広げられるかによって活用の幅が変わる一冊だと思います。


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