失語症では、物の名前が分かっていても、言葉がなかなか出てこないことが多くありますが、そんなとき、言葉の最初の音を聞くと思い出せるなど、ヒントがあることで言葉が出やすくなる方がいます。
今回紹介する『失語症リハビリテーション実践ガイド 教材編3 名詞表出訓練課題②』は、語頭や語尾、文字数など、さまざまなヒントを利用しながら名詞の表出を練習する教材です。
実際に内容を確認してみると、仮名を書く課題だけでなく、単語の中で音がどこにあるのかを考える課題や、漢字の構成要素を組み合わせる課題なども収録されていました。
教材編2と同じ名詞表出を扱っていますが、課題の形式は大きく異なります。
『教材編3 名詞表出訓練課題②』の内容
この教材には、絵や漢字、語頭・語尾の音などを手がかりにして名詞を完成させる課題が収録されています。
主な課題は、
・絵+漢字+語頭の仮名をヒントに、残りの仮名を書く課題
・絵+漢字+語尾の仮名をヒントに、残りの仮名を書く課題
・絵と漢字を見て、読みを仮名で書く課題
・指定された音が単語の何番目にあるのかを考える課題
・漢字の構成要素を組み合わせて、絵に対応する漢字を作る課題
です。
教材2と同じ名詞表出でも、文字の並び替えではなく、語頭音ヒントなど異なる側面から言葉にアプローチできる構成になっています。
語頭の仮名をヒントに名詞を完成させる課題
絵と漢字に加えて、言葉の最初の仮名が提示され、残りの仮名を書いて名詞を完成させる課題があります。
使用されている言葉は仮名2〜6音です。
例えば、絵を見ただけでは名前がなかなか出てこなくても、最初の音がヒントになることで言葉を思い出せる場合があります。
語頭の仮名があらかじめ提示されているため、何もヒントがない状態で名前を当てるよりも取り組みやすい課題です。
語尾の仮名をヒントにする課題
反対に、言葉の最後の仮名だけが提示されている課題もあります。
こちらも絵と漢字を見ながら、残りの仮名を書いて名詞を完成させます。
同じ単語を完成させる課題でも、語頭が提示される場合と語尾が提示される場合では、利用できる手がかりが異なります。
特に文字数の多い言葉で後半が曖昧になる方に合っている課題だと感じました。
絵と漢字を見て読みを仮名で書く課題
絵と漢字が提示され、その読みを仮名で書く課題もあります。
この課題では、答えとなる言葉の文字数も提示されています。
使用されている言葉は仮名2〜8音です。
語頭や語尾の仮名そのものは提示されませんが、丸の数で「何文字の言葉なのか」がヒントになります。
拗音の部分は小さな丸となっておりわかりやすくなっています。
絵と漢字から仮名を想起し、さらにその読みを文字で書く必要があるため、語頭・語尾の仮名が提示される課題とは一段ステップアップした課題となっています。
音が単語の何番目にあるのかを考える課題
次は指定された音が単語のどの位置にあるのかを考える課題です。
絵を見て単語を考え、その中で指定された音が何番目にあるのかを判断し、該当する番号を塗りつぶします。
使用されている言葉は仮名2〜8音です。
単純に名前を答えたり書いたりするだけではなく、ひとつの単語を音に分け、その中のどこに目的の音があるのかを考える必要があります。
言葉を構成している音に注目する課題として使えそうです。
漢字の構成要素を組み合わせる課題
漢字の構成要素を組み合わせて、絵に対応する漢字を完成させる課題もあります。
絵の名前を考えるだけでなく、その言葉を表す漢字がどのような形で構成されているのかを部首を組み合わせて考える必要があります。
仮名を使った課題が多い中で、漢字そのものに注目した少し違った形式の課題です。
漢字の想起が苦手という方には、部首を手がかりにしながら語彙の想起にアプローチする方法のひとつになりそうです。
教材編2とは課題形式が大きく異なる
教材編2と教材編3は、どちらも「名詞表出訓練課題」ですが、実際に内容を見ると課題形式にはかなり違いがあります。
教材編2では、文字の並べ替えを中心に、漢字のヒントの有無やダミー文字などによって課題の難しさを変えていました。
一方、教材編3では、
語頭の仮名
語尾の仮名
文字数
単語の中での音の位置
漢字の構成
など、異なった手がかりを利用します。
そのため、「名詞表出の教材をもう一冊」というより、教材編2とは違った方法で名詞にアプローチする教材という印象を受けました。
どんなヒントで言葉が出やすいかは人それぞれ
実際に失語症の方と関わっていると、同じように名前が出てこない場合でも、ヒントに対する反応は人によって異なります。
最初の音があると思い出せる方もいれば、漢字の部首を一つ書くだけでその後の言葉が想起される方もいます。
この教材では、語頭・語尾・文字数・漢字などの手がかりを使った課題が用意されています。
そのため、前回紹介した教材2や今後紹介する教材4や教材5のレビューも参考にどの本が自分に合っているのかを確認しながら練習を進めましょう。
『教材編3 名詞表出訓練課題②』はこんな方に向いていそう
実際に内容を確認して、特に向いていると感じたのは、
・言葉は出てこない症状はあるが、音読が得意な方
・語頭の文字があると言葉を思い出しやすい方
・仮名文字の想起が難しい方
・漢字の想起が難しい方
です。
名詞の意味そのものの理解が難しい場合には、教材編1の名詞理解課題から取り組む方法もあります。
また、文字の並べ替えを中心に練習したい場合には教材編2のほうが適しています。
どの教材が適しているかは、名詞理解の状態や、どのようなヒントが利用しやすいかによっても変わります。
実際に見て感じたこと
『失語症リハビリテーション実践ガイド 教材編3 名詞表出訓練課題②』を実際に確認して感じたのは、漢字の音読や語頭音ヒントで言葉が出やすくなる方、仮名・漢字の想起に使える教材だということです。
語頭だけでなく語尾を提示する課題や、文字数をヒントにする課題があり、さらに単語の中での音の位置を考える課題や漢字の構成要素を組み合わせる課題が収録されています。
教材編2が文字の並べ替えを中心としているのに対し、教材編3ではより音や文字自体の想起にアプローチします。
そのため、教材編2と3は同じ名詞表出課題でも、どちらか一方が単純に難しいというより、練習方法そのものが異なる教材として考えると選びやすいと思います。
名詞の理解はある程度できているものの言葉が出にくく、漢字の音読や語頭音などのヒントを利用しながら表出につなげたい方に使いやすい一冊だと感じました。


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