単語や文章をある程度表出できるようになっても、「物事を詳しく説明する」「自分の考えをまとめて伝える」といった、より複雑な表現が難しいことがあります。
『失語症訓練のためのドリル集8 難しい内容表現の改善をめざす』は、物事の説明、比較、長所・短所、状況に応じた発言、文章を読んだ感想や意見など、自分で内容を考え、それを言葉として表現する練習ができる教材です。
実際に内容を確認すると、すべての課題で文章レベルの書字または発話が必要となっており、シリーズの中でも難易度の高い一冊でした。
主な対象は軽度の失語症の方です。
『失語症訓練のためのドリル集8』はどんな教材?
8巻のテーマは「難しい内容表現」です。
これまでの巻では、単語を想起する、助詞を選ぶ、指定された単語を使って文章を作るなど、比較的答えの方向性が決まっている課題が多くありました。
8巻では、そこからさらに一歩進みます。
たとえば、2つの物事の共通点や相違点を考えたり、ある物事の長所と短所を考えたり、提示されたテーマについて自由に話したりします。
つまり、単に言葉や文章を表出するだけでなく、
何を伝えるか考える
→ 内容を整理する
→ 文章として表現する
という力が求められます。
収録されている主な課題
実際に確認すると、次のような課題が収録されていました。
・身近な物や出来事について説明する
・バラバラになった文を正しい順番に並べ直す
・慣用的な表現を使って文章を作る
・慣用句やことわざを完成させる
・2つの身近な物や事柄について、共通点と相違点を考えて表現する
・身近な事柄について、長所と短所を考えて表現する
・身近な物について、複数の使い方を考える
・提示された状況で、どのように対応するか考えて表現する
・2人の会話場面で適切な発言を考える
・文章を読み、感想や意見を述べる
・提示されたテーマについて自由に話す
一つの正解を選択する課題よりも、自分で考えて答えを作る課題が多いのが特徴です。
難易度は軽度向け
8巻の主な対象は軽度の失語症の方です。
実際に内容を確認すると、すべての課題で文章レベルの書字または発話が必要となります。
そのため、単語の表出そのものが難しい方や、まだ短い文章を作る段階にある方には難易度が高いと思います。
基本的な単語や文章の表出は可能だけれど、
「詳しく説明しようとすると難しい」
「自分の考えをまとめて伝えることが難しい」
「会話では簡単な受け答えはできても、複雑な内容になるとうまく表現できない」
といった方が、さらに高度な表現を練習するための教材と考えると分かりやすいと思います。
「考えてから表現する」課題が多い
8巻の特徴は、言語表出だけでなく、表現する内容そのものを自分で考える必要があることです。
たとえば、「2つの物の違いを説明してください」という課題では、まずそれぞれの特徴を思い浮かべ、共通点や相違点を整理する必要があります。
長所と短所を挙げる課題でも、単語や文章を想起するだけでは答えられません。
何を答えるのかを考え、その内容を整理して、さらに文章として表現する必要があります。
そのため、基本的な言語機能の練習から一段階進み、より実際のコミュニケーションに近い複雑な表現を練習できる内容になっています。
7巻との違いは?
7巻と8巻はいずれも文章表現を扱うため、どちらを選べばよいのか迷うかもしれません。
7巻では、指定された単語を使って文章を作る、短い文章を長くする、2つの文章を1つにまとめるなど、文章そのものを作成・展開する練習が中心です。(詳しいレビューはこちら)
一方、8巻では、説明、比較、長所・短所、感想、意見など、「何を伝えるか」から自分で考えて表現する課題が多くなります。
大まかに分けると、
7巻:文を作り、より長く複雑にする
8巻:考えを整理し、説明や意見として表現する
という違いがあります。
文章を作ること自体に難しさがある場合には7巻、自分で文章は作れるものの、説明や意見など複雑な内容をまとめて表現することが難しい場合には8巻が選択肢になります。
9巻との違いは?
8巻と9巻は、どちらも単純な言語課題から一歩進んだ内容となっていますが、目的はかなり異なります。
8巻では、物事を説明する、比較する、長所・短所を考える、感想や意見を述べるなど、複雑な内容を考えて表現することが中心です。
一方、『失語症訓練のためのドリル集9 日常コミュニケーションの改善をめざす』では、申込書、服薬説明書、時計、新聞、テレビ欄、予定表、メニューなど、実際の日常生活で必要となる情報を扱う課題が中心となります。
簡単に分けると、
8巻:考える・整理する・説明する・意見を述べる
9巻:日常生活の中で必要な情報を理解し、活用する
という違いがあります。
高度な言語表現を練習したい場合には8巻、実生活でのコミュニケーションや情報活用を練習したい場合には9巻が選択肢になります。
無料プリントでも練習できる?
慣用句やことわざ、文章の並び替えなどについては、無料教材でも練習できるものがあります。
一方で、
・2つの物事の共通点と相違点を説明する
・長所と短所を考える
・物の使い方を複数考える
・状況に応じた対応を考える
・文章を読んで感想や意見を述べる
といった、自由度の高い表現課題をまとめた無料プリントは比較的見つけにくいと思います。
また、こうした課題は問題そのものを作るだけでなく、対象者に合わせて難易度を調整したり、回答を引き出すためのヒントを考えたりする必要があります。
複雑な内容表現をまとまった形で練習したい場合には、市販教材を利用するメリットを感じやすい一冊です。
課題の使い方まで説明されている
このシリーズでは、それぞれの課題について、
・どのような方に適しているか
・課題の進め方
・ヒントの出し方
・実施上の留意点
・応用した訓練方法
などが説明されています。
特に8巻のように答えの自由度が高い課題では、どのように課題を進め、必要に応じてヒントを出すかを確認できることもメリットだと思います。
なお、このシリーズには解答が付いていません。
こんな方におすすめ
『失語症訓練のためのドリル集8』は、
・単語や文章の表出はある程度できる
・物事を詳しく説明することが難しい
・共通点や相違点を言葉で説明する練習をしたい
・自分の考えを整理して伝えることが難しい
・感想や意見を文章で表現する練習をしたい
・状況に応じて適切な発言を考える練習をしたい
・より高度なコミュニケーション能力を練習したい
といった方におすすめです。
まとめ
『失語症訓練のためのドリル集8』は、物事の説明、比較、長所・短所、状況に応じた発言、感想や意見など、より複雑な内容を考えて表現するための教材です。
すべての課題で文章レベルの書字または発話が必要となるため、主に軽度の失語症の方に向いています。
7巻が「文章を作り、長く複雑にする」ことを中心としているのに対し、8巻ではさらに進んで「何を伝えるか」を考え、整理して表現する力が求められます。
また、9巻が実生活での情報理解や活用を中心としているのに対して、8巻は説明・比較・意見などの高度な表現が中心です。
基本的な言語表出は可能になったものの、説明や意見など、より複雑で自由度の高いコミュニケーションに難しさがある方に検討しやすい一冊だと思います。
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