『失語症訓練のためのドリル集5』レビュー|助詞・文法・文構成を練習

教材レビュー

 失語症では、単語は思い浮かんでも、「が・を・に」などの助詞をうまく使えない、文法的に正しい文章を組み立てることが難しいといった症状がみられることがあります。

 『失語症訓練のためのドリル集5 文構成の改善をめざす』は、格助詞の選択や穴埋めをはじめ、時制、授受表現、受動文・使役文など、助詞や文法、文の構造を中心に練習できる教材です。

 実際に内容を確認すると、自由に文章を作る課題が中心というより、決められた文型や文法規則に沿って文章を完成させたり、書き換えたりする課題が中心となっていました。

 主に中等度〜軽度の失語症の方を対象としています。

『失語症訓練のためのドリル集5』はどんな教材?

 5巻のテーマは「文構成」です。

 特に目立つのが助詞を扱った課題で、格助詞の選択や穴埋め、誤った格助詞の修正などが収録されています。

 さらに、

・時制を変える
・授受表現を書き換える
・能動文と受動文を変換する
・使役文にする
・接続助詞や接続詞を選ぶ

など、文法的なルールに沿って文章を操作する課題へ進みます。

 そのため、「文章を自由にたくさん作るための教材」というよりも、助詞や文法を意識しながら、文を正しく組み立てる練習をする教材と考えると内容をイメージしやすいと思います。

収録されている主な課題

 実際に確認すると、次のような課題が収録されていました。

・名詞句や述語を選択する
・格助詞を選択する
・文章中の誤った格助詞を修正する
・格助詞を穴埋めする
・絵に対応する文を作る
・単語を選び、指定された文型の文を作る
・複合語を作る
・「れる・られる」「です・ます」など適切な語尾を選択する
・文章の時制を変える
・授受表現を書き換える
・能動文を受動文に書き換える
・受動文を能動文に書き換える
・使役文に書き換える
・適切な副助詞を選択する
・適切な接続助詞を選択する
・適切な接続詞を選択する

 助詞を中心に、文型やさまざまな文法表現が収録されています。

難易度は中等度〜軽度向け

 5巻の主な対象は中等度〜軽度の失語症の方です。

 1〜4巻では単語や文字を扱う課題が中心でしたが、5巻では文を扱うため難易度が上がります。

 単語の意味を理解するだけでなく、文の中でそれぞれの単語がどのような関係になっているのかを考える必要があります。

 特に、助詞の選択や文型の理解など、単語レベルよりも文法的な処理に難しさがある方に適した内容です。

助詞の練習が充実している

 5巻の特徴の一つが、助詞に関する課題が多いことです。

 格助詞については、単に空欄を埋めるだけでなく、

・正しい助詞を選ぶ
・間違っている助詞を見つけて修正する
・自分で助詞を想起して穴埋めする

など、異なる方法で練習できます。

 さらに、副助詞や接続助詞も扱われています。

 「単語はある程度分かるけれど、助詞の使い方が不安定」という方には、特に使いやすい内容だと思います。

助詞だけでなく、さまざまな文法を練習できる

 5巻は助詞が中心ですが、それだけではありません。

 時制、授受表現、能動文・受動文、使役文など、より複雑な文法課題も収録されています。

 簡単な選択課題から、文章そのものを書き換える課題まであるため、状態に応じて課題を選ぶことができます。

 特に受動文や使役文などは、単純な助詞の穴埋めとは異なり、文全体の構造を理解して操作する必要があります。

 助詞から始めて、より複雑な文法や文構造へ進めることが5巻の特徴です。

7巻との違いは?

 5巻と7巻はどちらも文章を扱うため、違いが分かりにくいかもしれません。

 5巻では、助詞や文法、文型など「文章をどのように組み立てるか」という文の構造を扱う課題が中心です。

 一方、『失語症訓練のためのドリル集7 文作成と難しい語句の改善をめざす』では、与えられた単語を使って文章を作ったり、複数の単語から文章を作ったり、短い文章をより長くしたりするなど、実際に文章を作成・展開する課題が多くなります。

 大まかに分けると、

5巻:助詞・文法・文型など「文の組み立て方」を練習する

7巻:自分で文を作り、より長く複雑な表現へ発展させる

という違いがあります。

 「助詞を正しく使えない」「文法的な文の組み立てが難しい」という場合には5巻、「単語や短い文は出るので、さらに文章を作る練習をしたい」という場合には7巻が選択肢になります。

3巻との違いは?

 3巻にも、動詞を想起して2語文を作る課題があります。

 3巻はあくまで動詞・形容詞・形容動詞の表出が中心で、動詞を単語として想起し、そこから短い文へつなげていきます。(詳しいレビューはこちら

 一方、5巻では、単語そのものの想起よりも、助詞や文型などを利用して文法的に文を構成することに重点が置かれています。

 そのため、

3巻:動詞などの単語表出から短い文へ

5巻:助詞や文法を使って文を正しく構成する

と考えると選びやすいと思います。

無料プリントでも練習できる?

 格助詞や接続詞の穴埋めなど、比較的基本的な課題については無料プリントでも練習できます。

 そのため、まずは無料教材で助詞の練習をしてみるのも一つの方法です。

 一方、5巻では、格助詞だけでなく、副助詞、接続助詞、授受表現、時制、能動・受動、使役などがまとめられています。

 これらの文法課題を一つひとつ無料教材で揃えるのは難しい場合があります。

 基本的な助詞の練習だけなら無料プリントでも補いやすいものの、さまざまな文法や文構造まで体系的に練習したい場合には、市販教材を購入するメリットがあると思います。

課題の使い方まで説明されている

 このシリーズでは、それぞれの課題について、

・どのような方に適しているか
・課題の進め方
・ヒントの出し方
・実施上の留意点
・応用した訓練方法

などが説明されています。

 また、文字が大きく、書き込みスペースにも余裕があります。

 なお、このシリーズには解答が付いていません。

こんな方におすすめ

 『失語症訓練のためのドリル集5』は、

・単語は分かるけれど、助詞を正しく使うことが難しい
・「が・を・に」などの格助詞を練習したい
・文法的に文章を組み立てることが難しい
・能動文・受動文・使役文を練習したい
・時制や授受表現を練習したい
・接続助詞や接続詞を練習したい
・単語レベルから文法・文構造の練習へ進みたい

といった方におすすめです。

まとめ

 『失語症訓練のためのドリル集5』は、格助詞を中心に、時制、授受表現、能動・受動、使役、接続助詞など、さまざまな文法や文構造を練習できる教材です。

 文章を自由に作ることを中心とした教材というより、助詞や文法を使って、文を正しく組み立てる力を練習する一冊と考えると分かりやすいと思います。

 文章作成そのものを重点的に練習したい場合には7巻がありますが、助詞や文法面につまずきがある場合には5巻が選択肢になります。

 基本的な助詞課題は無料プリントでも補えますが、受動・使役・授受表現などまで含めて、文法や文構造を幅広く練習したい方には購入するメリットを感じやすい一冊だと思います。

文構成の改善をめざす (失語症訓練のためのドリル集 5) [ 竹内 愛子 ]価格:3520円
(2026/9/6 17:19時点)

練習プリント一覧

コメント

タイトルとURLをコピーしました